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No.70インプラント治療後にはどうしてメインテナンスを受けなければならないのか?
インプラント治療後にはどうしてメインテナンスを受けなければならないのか?
インプラントが駄目になる原因は大きく2つ考えられます。
インプラント周囲炎と過大な噛み合わせによる力です。
インプラント周囲炎は天然歯の歯周炎とほぼ同じと考えられています。
歯周炎は歯槽膿漏菌による慢性的炎症と考えられていますので、インプラント周囲炎も歯槽膿漏菌の感染が原因です。
インプラント周囲炎に関係する菌は歯槽膿漏菌とほぼ同じのようですが、インプラント周囲炎に独特の菌もあるようです。
歯槽膿漏菌によるインプラント周囲炎を予防するには、自分の天然歯に対する歯周炎の予防対策と同じでいいことになります。
つまり、歯ブラシです。
定期的なメンテナンスを受けていただき、磨き残しのチェックと歯ブラシでは取り切れない歯垢・歯石の除去を行う必要があります。
力については、インプラントは垂直的な力には強いですが、横方向の力には弱いと考えられています。したがって、インプラントの被せ物クラウンを装着するときは、横方向の力がかからないように調整することが多いです。
しかし、インプラントを使用していると、嚙み合わせの変化により横方向の力が働くようになる場合があります。
定期的なメンテナンス時に咬合調整が必要になります。
インプラントの表面の粗さは大きく2つにわかれます。
一つは機械研磨ともう一つは粗面です。
機械研磨とは表面が平滑ということです。
初期のブローネマルクインプラントはこのタイプでした。
現在でもこの表面構造を好む歯科医師もいます。
しかし、現在では粗面インプラントが主流です。
機械研磨(machine surface)から粗面に変化してきた理由はインプラントと骨との生着率です。粗面の方が骨と結合しやすく、インプラントの成功率も上がります。
しかし、ひとたびインプラント周囲炎が発生すると、粗面のほうが厄介なのです。
ザラザラなインプラント表面に細菌が入りこむのです。
粗面のインプラントはメインテナンスがより重要であることがお分かりになると思います。
HAコーティングインプラントも粗面に分類されます。
岸本歯科医院で使用しているインプラントは山八工業社製ミューワンインプラントとアドバンス社製AQBインプラントです。
ミューワンインプラントは粗面のなかでも、あまりザラザラしていなく、AQBインプラントはザラザラしていると考えるといいと思います。
条件がいい場合はミューワンインプラントを使用し、特に骨が不足していてソケットリフトが必要な場合はAQBインプラントを使用しています。
マシーンサーフィスのブローネマルクインプラントは一度骨と結合が得られれば大変経過がいいインプラントだと思いますが、機械研磨のインプラントが使えるような骨の量と骨質がいい例はほとんどないと言っていいかもしれません。
当院でミューワンインプラントを採用している理由は、いろんなインプラント表面構造でインプラント周囲炎をおこさせた実験結果に基づいています。
それによると、人為的インプラント周囲炎では、ミューワンインプラントの表面構造であるスパッタリングコーティングされたHAコーティングインプラントと、現在世界的に売れているストローマンインプラントが採用している表面構造であるSLA(sandblasted and acid-etched)では変わりがないと報告されているからです。
(Marwa Madi et al: Peri-implantitis progression around thin sputtered hydroxyapatite-coated implants: Clinical and radiographic evaluation in dogs. Int J Oral Maxillofac Implants 2013, 28: 701-709.)
先日、東京で行われた日本口腔インプラント学会でインプラント界のご重鎮の先生の講演があり、拝聴いたしました。
私のようなHAコーティングインプラントを使う歯科医師と考えの接点はないと思っていました。
HAコーティングインプラント肯定派と否定派には深い溝があるのです。が、その先生が、HAコーティングインプラントを否定はしていないと発言されました。
使い方によっては容認されているような感じでした。
大学の教授以上に影響力のある先生の発言なので、大変うれしく思いました。おそらく今後も先生がHAコーティングインプラントをお使いになることはないと思いますが、一度使ってみて欲しいと思います。
(2019年3月18日)