No.76あえてインプラントの欠点について考える

あえてインプラントの欠点について考えてみました。

インプラントは噛むことには入れ歯よりも明らかに優れています。

さまざまなインターネット上での情報があふれている現在、インプラント治療が万能であるかのような記述、あるいは一生もつかのような記述も時折みられます。

本当にそうなのでしょうか。
インプラント専門医の立場から、あえてインプラントの欠点について考えてみようと思います。

  • 一生使えるかはわからない。

おそらく、生涯を通してお使いいただけるインプラントも多く存在すると思います。入れ歯を入れると、入れ歯を維持するための針金をかけた歯がダメになることを多く経験します。ブリッジをするとブリッジを支えるための両サイドの歯がダメになるも多く経験します。どう考えても、インプラントのほうが入れ歯やブリッジよりも天然歯を守るのです。しかし、一生使えるかどうかはわかりません。しょせん人間の作ったものです。永久的なものがあるはずがありません。条件の良い部位に、すなわち十分な骨が存在して、全身状態がよく、嚙み合わせの力が強すぎず、なおかつ歯ブラシを丁寧に行い、歯科医によるメインテナンスも受けていれば、長くお使いいただける可能性が高くなってきます。骨造成をおこなってインプラント治療をしなければならない場合、長期にわたってお使いいただくのは難しくなります。

ではなぜ、生涯保障なるものがネット上で存在するのでしょうか。
保障するにあたりメインテナンスを受けるという条件がついているはずです。
メインテナンスにこなくなることを前提にしているとしか思えないのです。

  • 芸能人のような美しい口元をつくるのは難しい

インプラント治療は噛むことが目的です。審美性の回復はブリッジのほうがすぐれています。多大な期待をもって前歯にインプラントをすると、思い描いていた結果と違うことがあります。ある程度のインプラントの限界をお話ししてくれる先生がいいと思います。もちろん、ご自分の歯と区別が分からない自然感のある仕上がりになることも多いです。

  • 食べ物がつまりやすい

インプラントと天然歯との間に食べ物がつまりやすくなることがあります。私たちもそういうことが起こらないように対策を考えますが、なかなか改善しないことがあります。ご自身でのケアが重要なのです。

  • 治療期間が長くなることがあります。

短くて1か月、ながくて1年以上になる場合もあります。治療期間が長くなるのは骨造成を伴うような場合です。使用するインプラントの種類によっても治療期間は大きくかわります。何件かの歯科医院に相談するのもいいかと思いますが、ネットの情報に影響されすぎて、いつまでも治療する歯科医院が決められない患者さんが多いのです。

  • 外科手術ですので、リスクはあります。

下顎では神経と血管をさわって神経麻痺や出血の危険性があります。しかしCT等(computed tomography)でしっかりと術前診断を行えば、そのようなことはほとんど起こらないですが、ゼロではありません。もともと神経との距離が近い場合、無理をせず、短いインプラントで対応することにしています。もちろん太くて長いインプラントを入れた方が、長持ちします。

(2019年8月17日)

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