【インプラント学会発表1】上顎前歯部に骨移植を行わず1ピースインプラントを使用した抜歯即時インプラント治療

上顎前歯部に骨移植を行わず1ピースインプラントを使用した抜歯即時インプラント治療

The evaluation of immediate implant placement for the anterior maxilla using 1 piece implants without bone graft

新宿区 岸本歯科医院 岸本幸康

緒言
 上顎前歯部の歯槽堤は抜歯後急速に吸収することが多く、インプラントの植立が困難になる場合がある。一般的には骨造成を行ない歯槽堤の改善を行なってインプラント植立を行なうか、骨移植を伴ない抜歯と同時にインプラント植立を行なうことが多い。しかしながら、移植骨を採取するため新たな手術創を作ることになり、患者の負担も増すことに。したがって骨移植を伴わずにインプラントの植立が行えれば理想的である。上顎前歯部に骨移植を伴なわずに抜歯と同時にインプラント植立を行なった症例に対して検討を加え報告する。

対象および方法
2008年4月から2011年3月までの間、上顎前歯部にAQBインプラント1ピースタイプを用いて骨移植を伴なわずに抜歯即時インプラント治療を行なった症例で上部構造の装着が完了した14症例15本を評価対象とした。植立は抜歯窩の口蓋側歯槽骨に行ない、近心側、遠心側および口蓋側歯槽骨にHAコーティング部が完全に埋入されるようにインプラント植立を行なった。術中に回収できた骨はインプラントの頬側にもどした。骨を採取するためのドナーサイトは作製しなかった。以下の項目について検討した。

対象の性別および年齢、2)インプラント植立部位、3)使用したインプラントの直径およびそのHAコーティングの長さ、4)インプラント植立から咬合圧加重までの期間

結果
 14症例15本すべてオッセオインテグレーションが得られた。対象の性別や年齢に一定の傾向はみられなかった。植立部位は側切歯が最も多かった。使用したインプラントの直径は4mmが最も多かった。長さは10mmが最も多かった。平均インプラント植立から上部構造による咬合圧加重までの平均日数は72日であった。

考察および結論

上顎前歯部頬側の歯槽骨は抜歯後急速に吸収するため、インプラント植立にあたり骨移植や人工骨の使用により歯槽堤の形態の改善を図るのが一般的である。特に2回法インプラントにおいてはフィクスチャーとアバットメント接合部まで骨が吸収をおこすため、口蓋側と頬側の歯槽骨の高さをそろえてインプラント埋入をおこなうことが必要と。一方1ピースインプラントではフィクスチャーとアバットメント接合部のマイクロギャップが存在しないため、必ずしも口蓋側と頬側の歯槽骨の高さをそろえる必要はない。そのため頬側歯槽骨に骨造成を行なわなくてもインプラント植立ができる症例があると考えられる。抜歯窩の口蓋側に深めに1ピースインプラントを植立し、インプラント頬側の空隙には近心および遠心歯槽骨からの骨再生を期待することに。したがって、近心、口蓋側および遠心歯槽骨の存在が条件に。すべての症例でオッセオインテグレーションが得られたことは、上顎前歯部に1ピースインプラントを使用し骨移植を回避して抜歯即時インプラント治療を行なう可能性を示したものと考えられた。どの程度の歯槽骨が必要なのか、またどの程度深くインプラントを植立すればよいかは今後の課題だと考えられる。

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