No.87バイオインテグレーション学会に参加して

2021年4月18日、コロナ禍のなか、Zoomを使ってオンラインで第10回バイオインテグレーション学会がおこなわれました。

4種類のHAコーティングインプラントメーカーによる、シンポジウムも行われ、私もAQBインプラント使用しているユーザーとして、シンポジストとして参加しました。

どのHAコーティングインプラントも臨床成績がいいようで、特に骨質が悪い症例には有効であることは、4人の先生の一致した意見です。私は、上顎臼歯部の垂直的骨が不足している症例にHAコーティングインプラントを埋入した長期例を発表しました。

また、移植しないでソケットリフト法でインプラントを埋入した場合でも、HAコーティングインプラントの先端部と上顎洞との間に骨ができることを示しました。インプラントにかかる垂直的力に耐えるためにも、インプラント先端部に骨があるほうがいいです。

おそらく、論文にしたら世界ではじめての論文になると思いますが、たくさんの論文を調べなくてはいけなく、大仕事になりそうでちょっと気が重いです。

特別講演は元東京理科大学教授、国立研究所開発法人理化学研究所 生命機能科学センターの辻 孝先生のお話でした。

再生歯胚の同所性移植により、歯根膜や神経機能など完全な機能を有する歯の再生を可能にしています。

しかし、歯胚から完全な歯になるまでの期間や費用などを考えると現実にはむつかしいかもしれません。

そこでインプラントに歯根膜を持たせた、次世代インプラントのお話でした。

使用されているインプラントはHAコーティングインプラントです。

チタンインプラントよりHAコーティングインプラントのほうが、より自然の歯に近いと思います。

なぜなら、HA(ハイドロキシアパタイト)は歯の構成要素のエナメル質、象牙質、セメント質の主成分であるからです。それゆえ、インプラントに歯根膜を持たせる研究にHAコーティングインプラントが採用されたのでしょう。

今までも、インプラント研究者の夢はインプラントに歯根膜をもたせて、天然の歯に近づけることでした。かなりの前進ということになります。余談になりますが、インプラントは入れたくないが、失った歯を再生歯胚でとりもどしたいという患者さんは多数いました。

特に、辻孝先生のことがマスコミなどで報道された直後は多かったです。

しかし、まだ夢の治療法であること、費用など現実的ではないことなど説明するとがっかりされました。今では夢の治療法ではなくなりつつあります。

研究の今後の発展が楽しみです。

(2021年4月26日)

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