No.67抜歯後の異常疼痛 ドライソケットについて

抜歯後の異常疼痛 ドライソケットについて

抜歯をおこなった後、痛みが全くないということはありません。
何らかの症状があります。
何となく違和感がある程度から、ずっと激痛が続く痛みまでさまざまです。

強い痛みの多くはドライソケットと言われるものです。
抜歯後の通常の治癒過程は、抜歯したくぼみ(抜歯窩という)に血液がかたまり血餅となって、抜歯窩の骨を覆います。
その後周りの歯肉が再生してきて、抜歯窩をうめていきます。
この血餅が骨の表面につかずに、骨が露出した状態になることをドライソケットと言います。

症状としては、強い疼痛です。


ドライソケットになる原因は諸説ありますが、局所麻酔薬を多く使用した場合、麻酔薬に配合された血管収縮薬アドレナリンの影響で虚血になりすぎて血餅が形成されない場合、抜歯後頻回にうがいし過ぎて血餅が脱落した場合、抜歯する歯の周囲骨が固く、なお且つ毛細血管が少なく抜歯に手こずる場合、などが考えられます。血餅が骨の表面につかずに、骨が露出した状態になり、強い痛みを伴うようになります。

抜歯が必要であるにも関わらず、抜歯をおこなわなかった場合、対象歯の周囲骨に炎症が長期間存続し、骨が反応性に硬化して硬化性骨炎のようになる場合も、抜歯に手こずる原因になります。


特に、下あごの親知らず(下顎智歯))の抜歯後に起こることが多いです。
上顎の場合、骨の毛細血管成分が豊富なため、ドライソケットの発生率は低くなります。
ドライソケットの発生を減らす工夫とは、局所麻酔薬を多く使用し過ぎない、抜歯後に傷を縫合して血餅が脱落しないようにする、抜歯直後のうがいは控えさせることぐらいです。
ドライソケットの発生をゼロにすることはできません。

一度発生すると、1から2週間ぐらい辛い思いをすることになります。
疼痛が強いため、患者さんが不審に思うことも少なくありません。
患者さんと歯科医師の信頼関係がうまくいかなくなる原因となる場合もあります。

治療は、いきなり疼痛がなくなるような療法がないのが実情です。
暖かい生理食塩水で傷を清潔にしたあと、抗生剤いりの軟膏で傷を保護して刺激を減らす工夫をします。
再掻把をして、周囲から出血・血餅形成を促すこともあります。現在は行われなくなってきているようです。患者の血液を採取・遠心分離して作製されるフィブリンゲルCGF(concentrated growth factor)やPRP(自己多血小板血漿 platelet rich plasma)を抜歯窩に入れると疼痛が緩和されるという先生もいますが、PRPやCGFは再生医療等安全確保法により厚生労働省に届け出が必要なので、行える施設は限られていると思います。

PRPはマー君こと田中将大投手や大谷翔平選手が肘靱帯に使用したことでも有名です。

(2018年11月21日)

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