No.73歯肉には2種類ある。動く歯肉と動かない歯肉―インプラントとの関わりについて―

歯肉には2種類ある。動く歯肉と動かない歯肉 ―インプラントとの関わりについて―

歯肉には2種類あります。

動く歯肉と動かない歯肉。

動く歯肉は可動粘膜といわれ、動かない歯肉は付着歯肉といいます。唇を引っ張って前後左右に動かしてみると、動く歯肉が可動粘膜であり、動かないのが付着歯肉であります。

 さて、インプラントとの関わりについて説明します。天然歯でもインプラントでも、接する部分の歯肉は動かない歯肉、すなわち付着歯肉がよいとされています。

口は食べ物を食べる時、動きます。
その動きに引っ張られて、可動粘膜も動きます。

可動粘膜とインプラントが直接接していると、口の動きのたびごとに可動粘膜が動き、インプラントと可動粘膜との間に食べ物が入り込むのです。

当然インプラント周囲炎が起こりやすい環境になるのです。
したがって、インプラントと接する歯肉は、口が動いても動かない歯肉、すなわち付着歯肉がよいのです。

 可動粘膜は頬っぺた側に、付着歯肉は歯肉のてっぺんあたり(歯槽頂)から口腔内側に存在します。
しかし、個人差が大きいので、付着歯肉がかなり頬っぺた側までの広がっている人と、可動粘膜が歯肉のてっぺんぐらいまで口腔内側に広がっている場合もあり、さまざまです。

 インプラント埋入するにあたり、歯肉に切開線をいれて、歯肉を歯槽骨から剥離していきますが、付着歯肉がインプラント接するように切開線を設定していきます。

不用意に歯肉のてっぺん(歯槽頂)に切開線をつくるとインプラントが直接、可動粘膜と接してしまうことも少なくないのです。

場合によっては歯槽頂よりも口腔内測に切開線をつくることもあるのです。
インプラントが付着歯肉と接するように、計画的によりデリケートな手術が必要なのです。

 最近ではフラップレス手術が多く行われるようになってきました。
フラップレス手術は歯肉に切開をいれないので、術後腫れが少なく、痛みも少ない利点もある方法ですが、付着歯肉の位置は全く考慮していない手術法です。

むやみにフラップレス手術を行ってはいけないのです。

また最近ではCT画像を読み込ませたコンピューターガイドによるガイディッドサージェリーが大流行りです。
CT画像には歯肉の状態は反映されません。
サージカルガイドを用いたガイディッドサージェリーも大変有効な方法でありますが、万能ではないのです。
フラップレス手術で、なおかつガイディッドサージェリーが行える症例はかなり限られていると考えていいと思います。
フラップレス手術、ガイディッドサージェリーは有効ですが、諸刃の剣と考えてください。

付着歯肉を大切にすることを考えたうえでの手術計画が重要です。

 付着歯肉を増やす手術、遊離歯肉移植術も行う場合もありますが、かなりデリケートな手術で、歯肉を取ってくる部位レシピエントサイトにも術後痛みがあります。一般的には行われなくなってきています。

(2019年4月17日)

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