インプラント治療Q&A院長の考え・参考文献No.3骨粗鬆症治療薬ビスフォスホネートと顎骨壊死について

2008年度口腔四学会合同研修会に出席し、現在歯科で大きな問題になっている骨粗鬆症治療薬ビスフォスホネートと顎骨壊死について、最新の知見を学んできました。

ビスフォスフォネート製剤は骨粗しょう症治療、乳がん・肺がん・前立腺がんにおいて頻発する骨転移に対しても有用な効果を示してきており、その恩恵を受けている患者さんが多数存在しています。

しかしながら、MARXら1)はビスフォスフォネートが顎骨での骨壊死の発症と密接に関わっていることを報告して以来、顎骨壊死(Bisphosphonate-related osteonecrosis of jaw,BRONJ)の報告が見られるようになりました。

骨は骨を造る細胞である骨芽細胞と骨を吸収する破骨細胞がバランスをとりながら維持されています。
ビスフォスホネートは破骨細胞を抑制することにより、骨吸収を抑えています。

本来吸収されるべき古い骨が残ることにより、ある時骨壊死となってあらわれると思われます。

BRONJは顎骨以外の骨には認められず、BRONJに陥っている顎骨を顕微鏡で調べると、口腔内細菌の増殖がみられることから、口腔内細菌が関与していることが考えられています2)。欧米の報告ではビスフォスホネートの投与方法により、BRONJの発症率が違うと考えられていました。

すなわち静脈投与では発症率が高く、経口投与では低いと思われていましたが、日本の報告では、経口投与でも報告例があることから、注意すべきとのことでした。

またレントゲン検査でBRONJに特徴的な所見はなく、その発症を見つけるのは困難であることも述られていました。
抜歯を契機とした発症が多いこと、自然に発症することもあることが報告されていました。

歯科的処置を行う前に、徹底した口腔清掃、抗生物質の予防的投与がBRONJの発生頻度を低下させるとしていました。
理論的にはビスフォスホネート投与を3ヶ月以上中止して抜歯をおこなても差し支えないし、抜歯2ヶ月後に投与再開してもよいと考えられるとしていましたが、まだ推測であり、統一した見解ではないようでした。
以上の意見を参考にして、岸本歯科医院ではビスフォスホネート投与している患者さんには、静脈投与、経口投与にかかわらず、抜歯はおこなわない、インプラント植立もおこなわない、局所麻酔を伴う処置もなるべく控えることとしました。

ビスフォスホネート製剤は歯科医にとってはやっかいな薬ではありますが、その恩恵は大きく、骨粗しょう症で寝たきりになった場合の5年後の生存率は口腔癌の生存率よりも低く、その改善に大変有効であることなども示されました。

またその恩恵の大きさゆえ、ビスフォスフォネートを投与する医師の側ではBRONJについて歯科医師ほど重大視していないと思われます。
しかし、一度発症してしまうとその制御は容易ではなく、顎骨の切断もありえるので、今後歯科治療におけるガイドラインを切望しています。
一方で、BRONJの発症率は低く、静脈投与において米国口腔顎顔面外科学会およびオーストラリア口腔顎顔面外科学では1%程度、欧州骨粗しょう症WGでは0.1%と報告されています。
さらに経口薬では、オーストラリア口腔顎顔面学会では0.01~0.04%と報告されており、発症率と歯科治療を控えることによる患者さんに対する不利益をどう考えるかも重要になってくると思っています。

(2009年3月3日)
1)Marx,R.E.:Pamidronate(Aredia) and zoledronate((Zemeta) induced avascular necrosis of the jaws:a growing epidemic.;J. Oral Maxillofac. Surg. 61,1115-1117,2003.
2)Sedghizadeh,P.R.,Kumar,S.K.,Gorur,A.,Schaudinn,C.,Shuler,C.F. and Costerton J.W.:Identification of microbial biofilms in osteonecrosis of the jaws secondary to bisphophonate therapy.;J. Oral Maxillofac.Surg.,66,767-775,2008.

当院は体に負担の少ない骨造成や骨移植を行わないインプラント治療を心掛けております。新宿御苑のすぐそばで土日も診療。
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